2021年2月、英国イングランドでは3度目のロックダウンが続いています。その影響は教育の現場にも及んでおり、1月からは昨年4月のロックダウン時と同様に学校も休校。オンライン授業を中心としたホームスクーリング(自宅教育)を余儀なくされています。ホームスクーリングの内容や形態は各地域や学校によってさまざまですが、今回は私の子どもが通っている、ロンドンのとある公立小学校での高学年向けホームスクーリングを一例としてご紹介します。

目次

授業の内容・形態

週5日、オンラインでリモート授業が行われています。授業で使用されているのはミーティングツールのZoom(ズーム)と、Googleが提供している教育機関向けツールの Google Classroom。事前に通知されたZoomのリンクにアクセスしてリモート授業に参加するとともに、学校が生徒ごとに設定したGoogle Classroomのアカウントを通じて、授業に必要な教材の配布や課題の提出が行われています。

ある日の1日のスケジュールはこんな感じです。

午前9時

担任教師の指導による1回目のZoomクラスにログイン。出欠確認。毎日1時間目は算数。前日の課題の答え合わせに続き、今日の課題についての説明(教材の確認・作業の説明など)と子供たちからの質問への返答。その後Zoomクラスは一旦解散。子どもたちは各自課題に取り組む。10~15分程度のビデオ教材を見てからプリント教材をこなす。

午前10時半

2回目のZoomクラスにログイン。毎日2時間目は英語(国語)。前日の課題について感想やコメントを語り合った後、1時間目と同様に、今日の課題の説明・確認をしてZoomクラスは解散。子供たちは各自課題に取り組む。課題はGoogle Classroomへアップロードして提出。

午前11時半

読書の時間。各自1日30分は読書の時間に充てることが推奨されている。

正午

ランチタイム・昼休み。

午後1時

3回目のZoomクラスにログイン。この日の午後の授業はアート。1・2時間目と同様、課題の説明・確認後にZoomクラスは解散。各自課題に取り組む。課題はGoogle Classroomへアップロードして提出。

1日の授業の終了時間については特に指定なし。

このような具合で、1日3回オンラインの「チェックイン」時間が設けられていますが、どれも強制ではありません。各家庭・生徒の事情に応じてできる時、できる枠に参加すれば問題ありません。出席率は、それでも毎回6割を超えているのではないでしょうか。また、3回のチェックインに加え、体育や音楽の授業が行われる曜日もあります。音楽は、皆で歌を歌ったり楽器の演奏を披露する子がいたりそれにコメントをしたりと、よりインタラクティブな授業内容です。さらに、通常の学期中に行われている授業とは別枠の楽器のレッスン(希望者のみ・有料)もオンラインで再開されています。

ロンドン、閉店中のパブ
<閉店中のとあるパブ。ロックダウン中はテイクアウェイ以外の飲食店は休業中>

授業中の子供たちの様子

リモート授業にはいくつかの決まりがあります。基本的にはカメラを常にオンにしておくこと、そして自分の名前を表示しておくこと。これらはセキュリティ上の理由から大切な決まり事です。先生たちは画面上の顔や名前を見ながら子どもたちにまんべんなく声掛けを行っています。先生が話している間は生徒たちはマイクをミュート、コメント機能の使用は禁止、背景やスタンプ、書き込みなどの設定でふざけるのも禁止、というのがお約束です。

それ以外はあまりキチキチとした感じではなく、質問があればミュートを外して先生に質問をすることも許可されていますし、逆に先生から名指してコメントを求められることもあります。特にお昼休みの後の午後のクラスなどでは、何か食べながら授業に参加している子もいれば、家族やペットが画面に登場している子も見かけます。

去年4月からのホームスクーリングの経験を踏まえて、今回は学校指導のカリキュラムがよりしっかりと組まれているおかげで子どもたちも先生や友だちとの「つながっている」感が格段に増えたのはありがたいことです。

提出した課題に、Google Classroomのアカウントを通じて先生からのコメントがもらえたり、オンラインの授業中に皆の前で「良かったよ」なんて言ってもらえたら、それはまた士気も上がります。とはいえ、小学生にリモートの授業だけで日々規則正しい学習態度を期待するのは無理があるというもの。先生たちからも全部は参加しなくていいよ、課題も全部はやらなくていいよ、と言われています。

ロンドン、ロックダウン中の街中の様子
<ロックダウンと言いながらも、街中は結構な人出です。昨年の最初のロックダウン時に比べると、人々の意識もかなりゆるんでいます>

保護者の反応

クラスの保護者たちによるチャットグループなどを通じて聞こえてくる声はおおむね良好です。リモート授業が始まった頃は、どのリンクを使うのか、とか課題のアップロードの仕方が分からない、といった混乱も見られましたが、今では学校側も保護者側もだいぶこのシステムに慣れてきた感じがします。それでも実際に学校に通って行われる授業に及ぶはずはなく、子どもたちの学習量や理解、遅れなどについての不安は常に話題に上がっています。

また、自宅勤務をしている保護者たちにとっては仕事との両立への負担は続いており、ストレスだという声はなくなりません。子どもが課題をちゃんと終えたかを確認し、それをアップロードして提出、という作業は仕事をしながらやるのは結構大変です。先日、電話による保護者面談の機会があったのでその辺りを先生と語らせてもらいました。先生ご自身も、いわゆるワーキングマザーということでその気持ちは分かる!と慰めあうだけでしたが...

ロンドン、ロックダウン中の商店街の様子
<商店街の様子。生活必需品以外を扱う店舗はすべて閉店中。シャッターの降りた店が並ぶ>

おわりに

以上、あくまでもとある小学校のとある学年からの一例、ということでご紹介しました。3月には学校再開もあり得る、という話も出ていますが、この記事の執筆時ではまだどうなるかわからない状態です。

1月末にはボリス・ジョンソン英首相が、すべての子どもたちの保護者に宛てて、感謝の気持ちを伝える手紙を発表しています。この中でジョンソン首相はホームスクーリングを行っている保護者たちに対しその苦労をねぎらう言葉をかけています。これはきっと英国だけでなく、同じ状況下にあるどこの国の保護者の方々も同じ経験をされているのではないでしょうか。

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