<Chabe01, Bourse Commerce – Paris I (FR75) – 2021-06-05 – 1, CC BY-SA 4.0>
Bonjour!
2020年から始まったコロナパンデミックの間、フランスでは様々な経済活動が停滞したかのように思えていましたが、この停滞のおかげで一気に進んだ事業もあったようです。
パリでは6月のロックダウン解除、夜間外出禁止解除を機に、これまで改修が進んでいた美術館等が一気にリニューアルオープンしました。
そんなリニューアルオープンラッシュの中、パリ中心にフランスの大富豪の私設美術館として華々しくオープンし、日本人建築家安藤忠雄氏の新作としても話題になった現代美術館「ブルス・ド・コメルス」をご紹介します!
目次
- 歴史建造物「ブルス・ドゥ・コメルス」とは?
- 穀物の取引所や商工会議所として利用されてきたブルス・ドゥ・コメルス
- フランスの大富豪フランソワ=アンリ・ピノー氏の手により現代美術館に
- 改修を手掛けたのは日本人建築家、安藤忠雄氏
- 昔の外装はそのまま活かし新たに整備された公園と調和
- 歴史ある内装と安藤氏のモダンデザインの融合が圧巻!
- 吹き抜け空間に展示されている蝋燭の彫刻作品
- 見所盛り沢山なので滞在時間は長めがおすすめ!
歴史建造物「ブルス・ドゥ・コメルス」とは?
ブルス・ドゥ・コメルス(Bourse de commerces)は元のパリ中央市場のあったレ・アール地区にある円形のガラスドーム屋根が印象的な建物です。
現在の建物は18世紀、元々は宮殿だった場所に穀物等の貿易商品の取引所として建設されました。壮麗な金属フレームのガラスドームは今見ても素晴らしいですが、1812年に作られた当時はこの規模のものとしては世界初であり、当時のいくつもの文献にその驚きが記されているほどです。
建物の脇に残る小さな塔「コロンヌ・メディチ(Colonne Médicis)」は、1578年に建設されて以来多くの人の手に渡りながら保存されており、美術館となった今でも当時の宮殿の持ち主であった貴族、カトリーヌ・メディチの名を冠して堂々と立っています。
<貴族のお屋敷だった頃の名残り「コロンヌ・メディチ」>
<昔の姿のまま美しく改修された天井画と天窓>
穀物の取引所や商工会議所として利用されてきたブルス・ドゥ・コメルス
その後約100年もの間パリ中心のレ・アール地区で穀物の取引所として利用されてきたブルス・ドゥ・コメルス。
90年代には主に商工会議所に使用されていましたが、改修が頓挫する等の問題を抱えており、パリの重要な歴史建造物でありながら観光客に公開される機会もなく、ひっそりと佇んでいました。
<改修前、2011年のブルス・ドゥ・コメルス。外壁も汚く残念なイメージ。 Mbzt, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons>
フランスの大富豪フランソワ=アンリ・ピノー氏の手により現代美術館に
2015年、ブルス・ドゥ・コメルスは有名高級ブランドを傘下に置く「KERING」グループのCEOである大富豪フランソワ=アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)氏の私設美術館として改修されることが決定します。
ピノー氏は現代アートのコレクターとしてすでにフランス国外に歴史建造物を改修した私設美術館を有しており、自身の祖国でもあるフランス・パリにも、コレクションを公開する美術館を建設するのがかねての夢だったそうです。
<外壁も見違えたように美しく清掃され、豪華なファサードが際立つ>
<美術館周辺はギリシャ神殿のような柱を持つ建造物が取り囲む>
改修を手掛けたのは日本人建築家、安藤忠雄氏
改修を手掛けたのは日本人建築家、安藤忠雄氏。安藤氏は以前にもピノー氏と共にヴェネツィアのパラゾ・グラッシ美術館、プンタ・デラ・ドガーナ美術館の改修も担当しています。
余談ですが、ピノー氏はこのプンタ・デラ・ドガーナ以前に、パリで安藤氏と共に別の現代美術館を作る計画を進めていたのだとか。フランスでは諸手続きが遅く、なかなか実現に至らなかったため、ヴェネツィアの美術館が先になってしまったのだそうです。
<ピノー氏と安藤氏が手掛けたヴェネツィアのプンタ・デラ・ドガーナ現代美術館 Jean-Pol GRANDMONT, 0 Venise, Punta della Dogana et basilique Santa Maria della Salute (2), CC BY 4.0>
昔の外装はそのまま活かし新たに整備された公園と調和
以前この界隈には少し奥まって薄暗くあまり雰囲気の良くない部分もありましたが、ブルス・ドゥ・コメルス美術館のオープンに伴いエリア全体がとても明るく安心して観光できる雰囲気になっていました。
ブルス・ドゥ・コメルスの外装は格段に明るく綺麗になり、レアールのショッピングモール、すっきりと整備されたネルソン・マンデラ公園やこちらも歴史あるサントゥスタシュ教会と調和しています。
<美術館を中心に、エリア全体がスッキリと明るく綺麗に>
<4階からはポンピドゥセンターまで一望できる>
歴史ある内装と安藤氏のモダンデザインの融合が圧巻!
建物は円形状になっており、どこからでも見学できる自由な雰囲気です。
中央は安藤氏のアイコンともいえるコンクリートの壁にぐるりと囲まれた巨大な吹き抜け空間になっており、ドーム型のガラスの丸天井から自然光が降り注ぎます。安藤氏は円形の建物の中に、もう一つコンクリートの円形の壁を作ることで見学しやすい動線を作っているのだそうです。
内装の改修には歴史的建造物修復のプロであるフランスの遺産建築家も参加したそうで、見事な天井画も綺麗に修復されました。
<天窓から溢れる自然光で作品がより魅力的に>
<留まっている鳩もアート作品!>
<様々な角度から建物を鑑賞できる動線>
<クラシックな木製ショーケースにも内にも作品が>
<歴史を感じる螺旋階段と直線的な照明の調和>
吹き抜け空間に展示されている蝋燭の彫刻作品
まるで祭壇のような吹き抜け空間の中央には重厚な大理石のギリシャ彫刻が…..と思ったら、なんとこれは蝋でできた彫刻で刻一刻と溶けていっています。
そうです、ここは歴史美術館ではなく現代美術館なのです。こちらはオープニングを飾ったウルス・フィッシャーの作品で、蝋でできた彫刻は会期中にどんどん溶けていき最終的には消えてなくなることで「創造的破壊」を表現しているのだとか。
<大理石の彫像かと思いきや蝋燭でできた現代アート作品>
<こちらの紳士も、見学者かと思いきや、蝋燭作品の一部>
<頭頂に点火されており刻々と溶けていきます>
<オフィスチェアもどんどん溶けていっています>
見所盛り沢山なので滞在時間は長めがおすすめ!
今回は建物の歴史をメインにご紹介しましたが、1階〜3階には10の展示室があり、ピノー氏が50年かけて収集してきたという収蔵作品も興味深いものが目白押しで素晴らしいので滞在時間は長めにとるのがおすすめです。
4階にあるレストラン「ラ・アール・オ・グラン」も、有名シェフ、ミッシェル・ブラス氏のパリ初出店のお店ということで今後話題になりそうなスポット。パリの中心でアクセスしやすい場所なのでぜひ、次回の観光プランに組み込んでみてくださいね!