<トップ画像:ソンム川の河口 ©Kanmuri Yuki>
フランスの環境庁は、国内の自然保護区のうち特に価値を認めるものに「グラン・シット・ド・フランス」というラベルを付与しています。これまでに指定された地域は約20か所。今日ご紹介するのは、そのひとつである「ベ・ド・ソンム(ソンム湾)」です。その名の通り、ソンム川が英仏海峡に注ぎ込む河口地域を指します。
ソンム川は、パリ以北にあるオー・ド・フランス地方を横断する川です。エーヌ県のサン・カンタン近くを源流とし、西に蛇行しアミアンを通って英仏海峡へと流れます。広く開いたベ・ド・ソンムは、美しい海辺はもとより、野鳥やアザラシが観察できる自然保護区、さらに中世の街並みが残る古い町が点在する魅力あふれる地域です。
目次
ジャンヌ・ダルクが通った道
ベ・ド・ソンムを取り巻く町の中でも必見なのは、左岸にあるサン・ヴァレリー・シュル・ソンムです。その歴史は古く、紀元前700年ごろは古代ギリシア人、紀元前5世紀にガリア人、続いて古代ローマ人が占拠した場所として知られます。7世紀には僧院が築かれ一時はフランス王の保護下に置かれましたが、幾度となくヴァイキングの侵略を受け、その後もさまざまな勢力がこの地を支配しました。
<1430年ジャンヌダルクもくぐった門©Kanmuri Yuki>
町に刻まれた歴史の逸話も多く、例えば1066年には、のちのウイリアム征服王であるノルマンディ公ウイリアムがこの港からイングランドへ向けて旅立ちましたし、1197年には、英国リチャード一世(獅子心王)による略奪と占領を経験しました。また1430年12月には英国に捕らわれたジャンヌ・ダルクが、この町を通りルーアンへ向かったという記録も残っています。
川沿いの遊歩道
ソンム川沿いの遊歩道には高い木が並び、木陰の下、ソンム川の流れとお屋敷群を眺めつつ、ゆったり散歩するのにぴったりです。夏は、河口近くの砂浜でビーチリゾート気分も味わえます。
<ソンム川沿いの道©Kanmuri Yuki>
城壁に囲まれた旧市街
とはいえ、個人的に一番おすすめしたいのは、城壁に囲まれた高台の旧市街散策です。石塀の続く砂利道や石畳の道、細く狭い路地には草花が生い茂り、どこを切り取ってもそのまま額に入れたい景色ばかりです。迷路のように入り組む道も楽しく、気の向くままいつまでも歩き続けたくなります。
<サン・ヴァレリー・シュル・ソンム旧市街©Kanmuri Yuki>
<サン・ヴァレリー・シュル・ソンム旧市街©Kanmuri Yuki>
行き方
- パリからサン・ヴァレリー・シュル・ソンムへは、まずフランス国鉄でノイエル・シュル・メール(Noyelles-sur-Mer)まで移動。直行列車で約1時間40分です。
- ノイエル・シュル・メールからサン・ヴァレリー・シュル・ソンムまでは、蒸気機関車が1日2往復しています。
ハイキングと野鳥観察を同時に楽しめるマルカンテール公園
ソンム湾の北側にある自然保護区の一角には、マルカンテール公園があります。200ヘクタールの敷地で観測できる野鳥は300種を超えます。ちなみに、ヨーロッパ全体で観測可能な野鳥は850種。マルカンテール公園で観測できる野鳥がいかに多様であるかがうかがい知れますね。そのほか、トンボだけでも27種、自生植物は280種を数えます。
<マルカンテール公園湿地部遊歩道©Kanmuri Yuki>
公園内は、松林から湿地帯、草原などを抜けていく一方通行の遊歩道をたどるようになっていて、ルート上、合計13か所の観測所が設けられています。大抵の観測所にはレンジャーがひとりいて、訪問者の質問に答えたり、観測のポイントを教えてくれたりします。
<マルカンテール公園内観測ポイントのひとつ©Kanmuri Yuki>
遊歩道は全コースを歩くと6kmありますが、途中2か所で近道ができるようになっています。近道ルートを用いた場合、距離は4kmか2kmのいずれかになります。(入場料は変わりません)
マルカンテール公園の最寄り駅は、フランス国鉄リュ(Rue)駅。そこからは、L709のバスが出ています。ただし、かなり遠回りで便も少ないので、できれば車で行くことをおすすめします。マルカンテール公園の駐車場は広く、駐車は無料。レストラン施設やピクニックスペースも隣接しています。ただし、入場料を払って入る保護区内での飲食は禁止されていますのでご注意ください。
<マルカンテール公園でのんびり子育てする白鳥©Kanmuri Yuki>
マルカンテール公園
- HP:マルカンテール公園
- 入場料:大人一人10.5ユーロ、子供(6~16歳)一人7.9ユーロ、6歳未満無料
- 2021年の営業時間と休業日:10/21~11/14の毎日10時~18時、11/15~12/19の土日10時~17時、12/20~12/31の毎日10時~17時
- 遊歩道地図(PDF)
※2021年10月現在、入場にはフランスの衛生パスが必要です。
まとめ
ベ・ド・ソンムは地元ではファンも多いものの、実はパリ以南ではあまり知られていない「穴場」スポットです。海外旅行が可能になってもまだできれば人混みは避けたいという方には、特におすすめです!