あなたは、ボードゲームで遊んだ思い出がありますか?任天堂やプレイステーションに場を奪われたボードゲームは、もう過去の産物だと思っていませんか?
ヨーロッパの多くの国々では、ボードゲームは定番の人気プレゼントで、常に一定の人気を保っています。近年フランスは、英国やドイツを超えるヨーロッパ最大の市場となりました。家族が集うクリスマスや友人達とのパーティーだけでなく、コロナ禍では自分のために購入する人も急増中。今回は、フランスのボードゲーム事情についてご紹介します。気になったゲームがあれば、ぜひ日本版でチャレンジしてみて下さいね!
目次
年末年始休暇を彩るボードゲーム
コロナ禍で迎えた2度目の年末年始。
フランスでは、デルタ株の第5波の最中に、オミクロン株の急速な拡大で第6波に突入。それでも2021年〜2022年のクリスマス休暇は、大きな移動規制なく過ごすことができました。キリスト教に基盤をもつ多くの国では、クリスマスは大切な「家族の日」。地方にちらばった家族が祖父母宅などに集まり、共にクリスマスの食事をする伝統があります。フランスでは、プレゼントは集まった家族全員へ用意されるのが常識。ボードゲームは、大人にも子供にも、常に一定の人気を保つ定番プレゼントのひとつです。
ボードゲーム(jeu de plateau)のカテゴリーは、「ジュ・ド・ソシエテ(jeu de société)」と総称され、カードゲームや器具などで遊ぶものも通常は一括りにされています。「仲間と遊ぶゲーム」という括りですが、1人から楽しめるものもあります。2020年、初回外出制限が実施された時期には15%も売上げを伸ばし、37%ものフランス人がゲーム遊びをしたと答えています。現在も市場は拡大中で、新種ゲームも続々と増えて進化を続けています。
ボードゲームの歴史
そこで、ボードゲームの歴史を調べてみました。ボードゲームを世界的に流行させたのは、経済危機最中アメリカで発売された、不動産売買で資産を築く「モノポリー(Monopoly 1930)」の大ヒットです。
その後、アルファベット単語を縦横に繋いでゆく「スクラブル(Scrabble 1950)」、世界征服政略ゲーム「リスク(Risk 1957 )」、RPGソフトのモデルになった「ダンジョンズ&ドラゴンズ(Donjons et Dragons 1974)」、前もってルールを学習する必要がない質問形式の「トリビアル・パスート(Trivial Pursuit 1979)」、絵を描く「ピクショナリー(Pictionary 1985)」など、多角的にジャンルを広げて人気商品を生み出してきました。
アメリカで発案された初期のボードゲームは、ルールが複雑で勝敗が決まるまで長時間(時には数日)かかり、若い男性を中心に人気を集めました。やがてドイツで時間制限付きの内容の分かりやすいゲームが商品化され、家族で楽しめる娯楽として一般化しました。1990年代からは商品が多様化、市場が拡大しました。
我が家の「リスク」は人気映画「指輪物語」バージョン。例にもれず、男子は夢中になりましたが、女子は複雑さと長さにすぐにギブアップしてしまいました。映画は大好きなんですけどね!
我が家のボードゲーム
では、私の家にある人気ボードゲームを少し紹介します。今では大きくなった子供達の成長過程で贈られたものが主なので、現在の改訂版と装丁が異なるのは、ご愛嬌でお許し下さいね!
殺人犯を追う推理ゲームの「クルード(Cluedo 1949)」、迷路の一部をつなぎながら宝物を集めて脱出する「ラビリンス(Labyrinthe 1986)」、有名写真誌がゲーム化した美景カードとクイズが勉強になる「ジェオ(GEO)」、珍回答が若者に人気のテレビ番組から生まれた「バーガークイズ(Burger Quiz 2002)」は、ケチャップ組とマヨネーズ組との対戦方式です。
人気のゲームには、親世代が自身の子供時代に遊んだものを子供に贈る殿堂入り的なものもあれば、若者間で評判になって流行する新しいタイプもあります。
最新人気のボードゲーム
近年の流行は、エスケープ(脱出)ゲームです。エスケープゲームは、実際のアトラクションとして、コロナ出現までは大流行の兆しをみせていました。小グループの参加者が、ひとつのミッション達成に向かって、謎解きしながら部屋または場所を移動して、制限時間内にミッションを達成できれば勝利です。
この休暇を盛り上げてくれたのは「アンロック!(Unlock ! 2017)」という新タイプの脱出ボードゲーム。2017年にフランスのゲーム大賞AS D’OR を受賞して以来、様々なバージョンが出ている若者に大人気シリーズです。若者ではない私は全く知らなくて、実際プレイしてみて、その進化に驚いてしまいました。
<怪盗ルパンの謎を追いレトロパリをゆく(Arsène Lupin et le Grand Diamant Blanc)>
このシリーズには携帯電話が必須で、専用アプリに接続してからゲームを開始します。参加者全員が知恵を出し合って、多数のカードに描かれた数々の謎を解き進んで、一時間内にミッションを達成できたら勝ち。
アプリは、残り時間のタイマー提示の他、打ち込んだ回答数字が正解なら次の指示を告知したり、難問にはヒントをくれたりします。ゲームにあったBGMが流れ、時には音声問題もあって、まるでアトラクションハウスにいる気分。難問が解けた時には全員から歓声があがり、大いに盛り上がりました。あまりゲームに熱中することのない私たちもすごく楽しめたので、ぜひトライしてみてください。ただし時間内に勝利するには、携帯アプリを迅速に操作する若者は必要かも?
ボードゲームとマンガのおすすめ店
山とあるゲームの中で、自分好みの一箱を選択するには、プロのアドバイスは欠かせません。今回お世話になったのは、ルーアンの中心街にある「バザール・ジュ・ビザール(Le Bazar du Bizarre)」という、ボードゲーム・マンガ・映画が専門の楽しいお店です。
ここには、それぞれのジャンルに詳しい知識と情熱をもった定員さんがいるので、流行やおすすめ商品のアドバイスはもちろん、かなりマニアックな質問にも答えてくれます。ボードゲームの他、店舗の半分は日本マンガやフィギュアで埋まっていて、ここは日本かと錯覚してしまうほど。日本人に優しいことは請け合いです。
日本文化が大好きだという経営者のローレンスさんは、少女時代に日本のテレビアニメに衝撃を受けたフランスのマンガ第1世代。好きが高じて職業にしてしまったそうです。1997年に立ち上げたお店は現在、ルーアン、カーン、リールに3店舗あります。街に来た際には、覗いてみてくださいね!
Bazar du Bizarre Rouen
さいごに
お店を訪問した際に、私が思わずゲットした新商品がありました。それは、
江戸時代の日本橋界隈を散策するボードゲーム「Iki(粋)」。
江戸一番の繁華街、日本橋界隈を散策し、商店や職人(浮世絵画家、灯籠職人、芸者、天ぷら売りなど)から、江戸文化を学んで「最強に粋な江戸っ子」になった人が勝ち!(笑)というユニークな内容で、ちょっと見過ごせない。
日本製かと思ってコピーライト確認すると「Sorry We Are French(「フランスの会社でごめんね」?または「フランス人で残念だ」?)」となっていた(爆笑)。いやいや、そんなに日本を愛してくれて嬉しいよ!と、これは息子への誕生日プレゼントに決定。
実のところ、普段の我が家は、会話も少なく各自が好きなことをするバラバラ家族なので、一同ゲームで盛り上がるなんて、今思えばかなり気恥ずかしい。
ボードゲームよ、家族団らんの貴重な時間を作ってくれて、ありがとう。