昔ながらの町家や白壁の蔵が立ち並ぶ町並みに、センスのよいスポットが続々と誕生している岡山県の倉敷美観地区。そこから南に約20kmの場所にある下津井は、映画『ひるね姫』のロケ地にもなった風光明媚な港町。今、話題のエリアをめぐる、ノスタルジックな瀬戸内トリップをご案内いたします。
注目スポットが続々集まる倉敷美観地区をてくてく
柳並木に白壁の蔵や町家が続く倉敷美観地区は、岡山県屈指の人気観光スポットです。川舟から倉敷の町並みを観賞したり、岡山フルーツを使ったスイーツが自慢の町家カフェで休憩したりと、散策の楽しみは尽きません。
最近では、マスキングテープ発祥の地としても注目されるようになり、「如竹堂」をはじめとする専門店では、定番品から限定品まで種類豊富に販売。また手仕事の町としても有名で、2017年3月に誕生した「クラシキ クラフト ワークビレッジ」では、デニム、帆布など手仕事の逸品を扱う5店舗が集結。制作現場の見学や工房の一角で行うクラフト体験など、モノ作りの過程に触れることができることも、倉敷ならではの楽しみです。
映画の舞台、下津井の町の魅力とは
倉敷散策を楽しんだら、電車とバスを乗り継ぎノスタルジックな下津井へ。ここは瀬戸内海に面した港町で、2017年3月に公開された映画『ひるね姫』の舞台でもあるのです。当初、神山健治監督はアニメーション映画の舞台として尾道あたりをイメージしていたそうですが、ロケハンに出かけた際、瀬戸大橋のたもとも見てみたいと途中下車して立ち寄ったのが下津井だったのです。
物語の地に下津井を選んだ理由を、監督は映画の舞台挨拶でこう話しています。「下津井の港があり、その向こうには大きな瀬戸大橋があって、海が太陽の光を反射させキラキラしていて。日本昔話みたいな島がプカプカ浮かんでいる感じが、僕のふるさととはまったく違う風景なのに原風景のようで。時間がゆっくり流れていて癒されるところだなと思ったんです」。監督の心を動かした下津井の風景とは。その魅力を感じに、町並みさんぽに出かけてみましょう。
散策前に、港町の屋敷跡でランチタイム
下津井散策の前にぜひ訪れたいのが、江戸時代から明治時代にかけて活躍した商船「北前船」の寄港地として栄えた下津井の歴史を紹介する「むかし下津井回船問屋」です。問屋仲介業を営んでいた高松屋の母屋などを復元し、昔の下津井に関する資料を展示しています。
歴史ある町並みにたたずむ老舗の和菓子をおみやげに
食事を楽しんだら、いよいよ町歩きスタートです。「むかし下津井回船問屋」の周辺は、下津井町並み保存地区に選定されている海岸沿いの旧街道。当時の商家や蔵などが残り、本瓦葺きの屋根、漆喰の壁、格子窓など歴史的景観を今に伝えています。
そんな風情ある町並みに溶け込むように建つのが、明治43(1910)年創業の和菓子処「磯乃羊羹本舗 田中花正堂」です。鮮やかな緑色が印象的な「磯乃羊羹」は、国産インゲン豆とミネラルたっぷりの天然水、そして青海苔を使い、丁寧に練り上げた看板商品。表面は砂糖のシャリッとした食感、中はしっとり、そして鼻に抜ける磯の香りがおいしさを運ぶ下津井銘菓です。また最中も有名で、定番の「ふる里最中」のほか、春は桜、秋はフクロウなど季節限定の最中も登場します。
ロケ地をめぐり、素顔の瀬戸内に出会う
下津井町並み保存地区から近くの場所に、ロケ地の舞台が5か所ほど集まっています。たとえば造船所は、主人公ココネの幼馴染・モリオの父親が営む船舶ドッグとして劇中に登場しています。また、ココネが通学路としている路地も町の中に実在します。両側に民家が迫り、人一人通るのがやっとという細い路地は、郷愁をさそう雰囲気に包まれています。
さらに、ココネが毎朝学校に通うため利用するバス停「田の浦港前」も必見です。目の前には、プカプカと島が浮かぶ瀬戸内海と停泊する漁船が並ぶ港町が広がり、監督を魅了した飾らない瀬戸内の風景と出会えます。
ロケ地めぐりのハイライト、田土浦坐神社へ
ココネが瀬戸大橋を背景に階段を駆け下りる印象的なシーンの舞台となったのが「田土浦坐神社」からの景色です。階段の先には、瓦屋根の家並みと瀬戸内の島風景、そして近くに迫りくる瀬戸大橋が一度に見渡せる絶景スポットで、自然美と建築美のコントラストは圧巻です。
夕凪の頃、鏡のように穏やかな瀬戸内の海を夕日がうっすらと染めていきます。飾らない瀬戸内の風景は、いつまでも見飽きることがありません。
映画の中に入りこむ? フォトラリーキャンペーン実施中!
ロケ地めぐりもおすすめですが、映画の世界をもっと楽しむなら、こちらのイベントに参加してはいかがでしょう。映画のワンシーンを切り取ったトリックアートが体験できる「フォトラリーキャンペーン」は、下津井をはじめ、倉敷、玉島エリアで開催。計5か所のフォトスポットで撮影したら、専用パンフレットにスタンプを押印しアンケートに答えて各会場の窓口へ。毎月先着でオリジナルグッズをプレゼントしています。さらに、トリックアートで撮影した画像をツイッターに投稿する「フォトコンテスト」も同時開催。
この秋は、注目の倉敷美観地区とノスタルジックな港町・下津井をめぐりながら、フォトラリーもぜひ楽しんでみてください。