ドイツの街を訪れると、その交通事情に驚かされるかもしれません。なぜかと言うと多くの大都市で今でも路面電車が走っているからです。ドイツの首都であるベルリンも例外ではなく、街の東部を中心に路線網が発達しており、市民の重要な足となっています。
そんなベルリンの路面電車ですが、移動手段としてだけでなく風景や雰囲気を楽しむことができる路線もあります。それはベルリンと隣接する町を結ぶ「ヴォルタースドルフ電気軌道(Woltersdorfer Straßenbahn)」です。今回は特別な風景を楽しむことができる「ヴォルタースドルフ電気軌道」と、それを使って訪れることができる見所について紹介したいと思います。
目次
旧型車両が走る特別な路線
「ヴォルタースドルフ電気軌道」の出発点となるのは、ベルリン郊外にある「ラーンスドルフ駅(Rahnsdorf)」です。終着地となるのはベルリンに隣接するヴォルタースドルフ(Woltersdorf)で人口8,000人程の町です。
路線の全長はわずか5.6kmで乗車時間はおよそ15分程。このように非常に短い路線ですが、多くの鉄道ファンを惹きつける特別な魅力を持っています。その魅力とは1950/60年代に製造された旧型車両の運転です。近年ドイツではバリアフリーや車両の現代化のために、古い車両は引退して新しい車両へと置き換えられています。そのため「ヴォルタースドルフ電気軌道」のように旧型車両が運転しているのは珍しくなっているのです。
郷愁を感じさせる路面電車
出発駅となる「ラーンスドルフ駅」に立つと、驚かされるのはその風景。停留所の周りには他の交通機関との乗り換え駅がありますが、それ以外には何も無く森が広がっています。そして停留所から伸びる路面電車の線路は森の中へ伸びて、その中に溶け込んでいます。
そんな場所へと、森の中からガタゴトと音を立ててやってくるのは1両の旧型の路面電車。このような風景は、とても21世期のものとは思えないでしょう。あまりの郷愁を感じさせる風景に、鉄道ファンでなくとも思わずカメラを構えて写真を撮りたくなるかもしれません。
幻想的な風景を走る路面電車
「ヴォルタースドルフ電気軌道」では路線の3分の1が森の中を走ることになります。木々が枝葉を伸ばす森の中を線路が伸びています。
もし時間があれば、このような線路に沿って伸びる道を次の停留所まで歩くのも悪くないかもしれません。2キロにわたって森に囲まれた道を歩けば、思いっきり自然を満喫することができます。また森の中を路面電車が走り抜ける光景を眺めることもできます。
旧型の車両、延々と広がる森、そこに真っ直ぐ伸びる線路。それらが織りなす風景はとても幻想的で、このような風景を見るだけでも訪れる価値があるでしょう。
終点に広がる美しい湖畔の風景
路面電車に乗っていくと、時折お店や教会が顔を覗かせる、のどかなドイツの片田舎の風景を楽しむことができます。このような風景を楽しんでいると、やがて終着駅「ヴォルタースドルフ水門(Woltersdorf, Schleuse)」に到着します。
駅名の通り停留所近くには二つの湖を繋ぐ水路と水門があります。このような場所に広がるのは美しい湖畔の風景。多くの観光客が訪れるような観光地ではないため、騒がしくなく落ち着いた雰囲気が漂っています。
もちろん湖畔には美しい風景を楽しむことができるレストランもあり、食事やお茶を楽しみながらゆったりとした時間を過ごすこともできるでしょう。
跳ね橋での船の往来の様子も楽しむ
このような特別な路面電車で訪れることができるヴォルタースドルフですが、見所は美しい湖畔の風景ばかりではありません。
終着駅近くの水門には船の移動を可能にする跳ね橋も架けられており、船の往来や橋桁の上がり下がりの様子を眺めることができるのです。水路に船が入れば、警笛が鳴り響き遮断機が下りてきます。そして橋桁はゆっくりと上がっていきます。その後に水門は閉じられて水路内の水位が変わり、船は隣の湖へと移動することができるのです。
このように「ヴォルタースドルフ電気軌道」を使った小旅行では、旧型路面電車での移動を楽しむと同時に、跳ね橋を利用した船の往来の様子を楽しむことができるでしょう。そのため船や鉄道ファンにとっては見逃すことのできない場所です。もちろん、そうでなくても美しい風景や幻想的な光景を楽しめるため、ぜひ訪れてほしい場所になっています。
ヴォルタースドルフ電気軌道(Woltersdorfer Straßenbahn)
- 運行時間:4時台から23時台まで(2021年11月現在)
- URL:http://www.woltersdorfer-strassenbahn.de/
ヴォルタースドルフ水門(Schleuse Woltersdorf)
- 住所:An d. Schleuse 2, 15569 Woltersdorf