母を捜してベルリンを駆け巡る兄弟を描いた映画『ぼくらの家路』― ベルリンの今が分かる感動作
ドイツ最大の都市、ベルリン。1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌年に東西ドイツが再統一。ドイツの分断前に首都だったベルリンは、再び首都の座に返り咲きました。

ベルリン観光では人気の高いドイツ連邦議会議事堂、華やかなブランデンブルク門、博物館が集まっているムゼウムスインゼル(博物館島)にあるベルガモン博物館など、訪れたい建築物の多いベルリン。

ナイトライフも多種多様で、様々なクラブがあることでも有名です。

今回は、そんなベルリンの“今”を切り取った、子ども目線で描かれた映画『ぼくらの家路』を紹介します。

母に代わって弟の世話をする主人公ジャック

母に代わって弟の世話をする主人公ジャック
ママが大好きな子どもたち
10歳のジャック(イヴォ・ピッツカー)と6歳のマヌエル(ゲオルグ・アームズ)の兄弟の母親ザナ(ルイーズ・ヘイヤー)は、まだ若いシングルマザーで、子どもの世話よりも恋人との時間や夜遊びを優先していました。それでも、ジャックとマヌエルはママが大好きです。

毎朝、ジャックはマヌエルに朝食を食べさせ、学校へ行きます。帰宅してからも、マヌエルの世話や家事に忙しいジャック。


ママが友達と遊びに行く時にはついて行くこともあるジャックとマヌエル

ジャックは養護施設に入るが、家に帰りたくて飛び出してしまう

ジャックは養護施設に入るが、家に帰りたくて飛び出してしまう
独りぼっちで家に帰ろとするジャック
しっかり者のジャックですが、彼もまだ10歳の子どもです。ある時、マヌエルを風呂に入れようとしたジャックは、お湯の温度の調整をし忘れ、マヌエルに火傷を負わせてしまいます。

その事件をきっかけに、ジャックは児童福祉局の指導のもと、養護施設に入ることになります。施設では友達もできず、つらいいじめに遭い、一刻も早く家に帰りたいと願うジャックは、ひたすら夏休みを待ちわびます。

そして、待ちに待った夏休み。ところが、ママから電話が入り、仕事が入ったから迎えに行くのは3日後になると告げられます。ガッカリしたジャックは、施設を飛び出してしまいます。

兄弟は行方の分からないママを捜してベルリンの街を駆け回る

兄弟は行方の分からないママを捜してベルリンの街を駆け回る
ジャックはマヌエルを迎えに行く
施設から夜通し歩き続け、どうにか家に着いたジャック。でもママの姿はなく、鍵もないため家にも入れません。

ジャックはママの友達の家を訪ね、預けられていたマヌエルを引き取ります。兄弟はママの仕事場から、遊びに出かけそうなナイトクラブ、さらに昔の恋人の職場まで、ママを捜してベルリンの街中を駆け巡ります。


ママはどこにいるのだろうか…?

夜の街をさまようジャックとマヌエル

夜の街をさまようジャックとマヌエル
寝る場所を探す2人
ジャックとマヌエルは、満足な食べ物にも寝るところにも困り、危険な目に遭いそうになりながら、3日間ママを捜し続けます。でも、なかなか見つかりません。

果たして、小さな肩を寄せ合う幼い兄弟は、再びママの腕の中に帰ることができるのでしょうか……?

“今”のベルリンが描かれている映画

“今”のベルリンが描かれている映画
迷子になることもなく、弟を守るしっかり者のジャック
弟の手前、弱音を吐かずに頑張る健気なジャックと、まだ何も分からない天使のようにかわいいマヌエル。ジャックは弟を守りながら、ママを見つけ出すために知恵を絞り、昼、そして夜のベルリンを移動していきます。

兄弟の背景に映る街は、まさに“今”のベルリン。ナイトクラブやショッピングモール、電車など、ジャックたちと一緒にママを捜して、ベルリンを散策している気持ちになります。


わずかな食べ物を分け合う

ショッピングモールを散策する2人

ジャックはママを恋しがりつつ、大人になっていく

ジャックはママを恋しがりつつ、大人になっていく
子どもの世話より遊びを優先させるザナだが、それでもずっとママと一緒にいたいジャック
大人になり切れない親のネグレクトの問題を取り上げ、リアルな現代社会を描く『ぼくらの家路』。様々な決断をしながら、少しずつ子どもの時間に別れを告げていくジャックの姿が切ないです。でも、「かわいそう」と思うよりも、「頑張って!」と応援したくなる映画です。

ジャックを好演したイヴォ・ピッツカーは、本作で俳優デビューした注目の逸材。とても自然でありながら、力強い演技で観客を引き込みます。

魅惑的な街・ベルリンの素顔が映し出される中、ジャックとマヌエルの3日間の旅を描く本作は、深く心に残る珠玉の1本です。


『ぼくらの家路』
9月19日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
© PORT-AU-PRINCE Film & Kultur Produktion GmbH
監督:エドワード・ベルガー
脚本:エドワード・ベルガー& ネル・ ミュラー=ストフェン
製作:ヤン・クルーガー、レネ・ローマート
出演:イヴォ・ピッツカー、ゲオルグ・アームズ、ルイーズ・ヘイヤー、ネル・ ミュラー=ストフェン、ヴィンセント・レデツキ、ヤコブ・マッチェンツ
2013年/ドイツ/ビスタ/5.1ch/1時間43分/原題:JACK/PG12/日本語字幕:吉川美奈子
公式サイト:bokuranoieji.com
配給:ショウゲート

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