旅行ライターの松岡絵里が、国内のプチ秘境旅を提案するシリーズ。第4回は、島根半島から約60kmの日本海に浮かぶ「隠岐・西ノ島」です。断崖絶壁や、草原に馬や牛が放牧されている雄大な景色はまるでヨーロッパ。絶景だけでなく、歴史と文化、そしてグルメまで、見どころいっぱいの島への旅へご案内します。
フェリーに2時間乗って、島へ到着
日本海に浮かぶ離島・隠岐。正確には「隠岐諸島」という島々の総称で、知夫里島、中ノ島、西ノ島、島後の4島を中心に構成されています。その中でも最近、絶景スポットとして注目を集めつつあるのが西ノ島です。
大阪や島根などから飛行機も出ていますが、今回私が選んだのは、鳥取県境港から出ているフェリー。フェリーに乗ること約2時間で西ノ島の別府港に着きました。
複雑な海岸線が生み出す、異国のような絶景
西ノ島で最初に訪れたのは摩天崖。ここで早くも衝撃を受けました。目の前に広がるのは、大スケールの草原と断崖絶壁。257メートルの高さはまさに大迫力。その高さは日本一の海崖として知られています。
しかも、崖の上にはあちこちに牛や馬が放牧されていて、のんびりと草を食む牧歌的な風景に心が和みます。日本広しといえども、馬や牛が自由に闊歩できる場所は、決して多くありません。断崖と牛や馬とのコントラストが生み出す壮大なスケール感に、「ここはニッポン?」と驚くばかり。イギリスの美しき田舎の牧草地帯を思わせる、どこか異国的な風景なのです。
観光客もそれほど多くなく、これだけの大パノラマをほぼ独り占めできるのも嬉しいですね。
絶景につぐ絶景!まるで自然が生んだ芸術品
摩天崖周辺は13キロにわたって200〜250メートルの岸壁が続き、波の力で浸食された数多くの奇景が見られます。摩天崖の下には通天橋と言われる、アーチ型の奇岩も。そこまでの遊歩道も整備されているので、のんびりと散策するのもおすすめです。
摩天崖がある国賀海岸の南側の突き出した半島には赤尾展望所があり、ここからは摩天崖・天上界・国賀浜を一望することができます。また、島の南西部には、隠岐島前湾内のカルデラ地形を見渡すことができる鬼舞展望所も。
これらの絶景スポットを陸から眺めた後は遊覧船へ。長年の風波により浸食されて出来た奇岩は、まさに自然の芸術品です。
日本版「青の洞窟」は本家イタリアにも負けない美しさ
遊覧船のコースに含まれているのが、日本版「青の洞窟」と言われる「明暗(あけくれ)の岩屋」。中に入れるかどうかは海次第。3回に1回しか入れないそうです。運良く入れたら、神秘的な風景が待っています。
もちろん、美しい海も西ノ島の見どころ。ダイビングやシュノーケリング、シーカヤックなど、マリンスポーツも楽しむことができます。
平安時代に創建された「焼火神社」へお参り
西ノ島で訪れたいのは絶景スポットだけではありません。パワースポットとして知られる神社やお寺もあります。
そのひとつ、平安中期の創建と言われ、国の重要文化材にも指定されている焼火神社は、かつて遭難しかかった後鳥羽上皇が救われたという伝説が残ることから、海上の守護神と言われています。境内は聖域とされ、老杉も多く神聖な雰囲気。趣ある神社の佇まいに心が落ち着きます。
海に囲まれた離島だからこそ味わえる魚介グルメ
島内を目一杯見尽くした後は、隠岐グルメもお忘れなく。日本海に浮かぶ離島だけに、絶品の魚介類が堪能できます。
地の魚は、旬のものをシンプルにお刺身でいただくのがおすすめ。そして、ここに来たら味わうべきはサザエです。島内のレストランでは、1年を通して身の締まったサザエをたっぷり使ったサザエ丼やサザエカレー、サザエご飯が味わえます。また、秋から冬に旬を迎えるイカも名物の1つです。
隠岐ユネスコ世界ジオパークに認定されている隠岐諸島には、西ノ島の絶景スポット以外にも、夕日スポットとして知られる島後の「ローソク島」、日本の滝百選に選ばれている「壇鏡の滝」など、見どころがまだまだあります。隠岐の島々の自然をのんびりと巡る秘境旅はいかがでしょうか?
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文:松岡絵里 構成:相馬由子