新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、美術館の休館や展覧会の中止など、アートを取り巻く環境は大きく変化しました。自粛生活中のオランダでは、家にいながら楽しめるバーチャル展覧会やオンラインのオープンアトリエなど、新しい試みが始まっています。
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オンライン美術館でオランダの名画を満喫
ライクスミュージアム(アムステルダム国立美術館)は、レンブラントやフェルメールなど17世紀オランダ絵画を中心に、8000点以上の作品を展示するオランダ最大の美術館です。新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として2020年3月から休館が続いたことを受け、家にいながらアートを楽しむための「ライクスミュージアム・フロムホーム」のプロジェクトが始まりました。
<バーチャルツアーのキャプチャ画像>
「最高傑作に大接近 (Masterpieces Up Close)」と題されたバーチャルツアーでは、荘厳な雰囲気の「名誉の間」に飾られた、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』や『手紙を読む青衣の女』、レンブラントの『ユダヤの花嫁』、ヤン・アセリンの『威嚇する白鳥』など珠玉の名作を、オーディオガイドを聴きながら鑑賞できます。
「名誉の間」の奥に広がる「夜警の間」には、レンブラントの『夜警』が展示されています。四つの女像柱が黄金に輝くこの展示室は、19世紀の建築家ピエール・カイペルスによって、『夜警』のためにデザインされました。2003年から10年をかけて、見事に復元されたインテリア装飾にもぜひ目を向けてみてください。
『夜警』は2020年現在、大規模なが修復作業中で、バーチャルツアーでもその様子を見学することができます。
「ライクスミュージアム・フロムホーム」ではバーチャルツアーの他にも、ポッドキャストで名画にまつわるエピソードを聴いたり、「舞台裏 (Behind the scenes)」で閉館後の作業を覗たり、「ライクス・クリエイティブ (RijksCreative)」で巨匠の技法を学んだりできます。
混雑を気にせずに心ゆくまで名画を鑑賞できるのは、自粛生活ならではの楽しみです。ぜひ「ライクスミュージアム・フロムホーム」でアートな時間を過ごしてみてください。
※「ライクスミュージアム・フロムホーム」は英語・オランダ語でご利用いただけます。ライクスミュージアムは2020年6月1日より営業を再開(要予約)しています。
オープンアトリエの新しいスタイル
オランダでは新型コロナウイルス禍で、ギャラリーの営業が禁止されたり展覧会が中止になるなど、多くのアーティストが活動の場を制限されてしまいました。私の美術アカデミー時代の知人たちも、各々のアトリエで制作を続けてはいるものの、「展覧会やワークショップが開催できない」や、「モデルセッションが出来ない」などの問題を抱えていました。
この逆境を生かして、オンラインのオープンアトリエを開催したアーティストもいます。通常であれば同じ地域にアトリエを構えるアーティスト達が、同じ期間にアトリエを公開して作品を販売するのですが、これを全てオンラインで行う新しい試みです。
地図上にアトリエとアーティスト名が表示され、クリックして作品を鑑賞します。気になる作品があればアーティストに直接コンタクトできます。オンラインで作品をプロモーションできるユニークな企画で、私の活動する地域でも開催されることがあれば、ぜひ参加してみたいと思いました。
心が華やぐクリエイティブな自粛生活
私はイラストや絵画の仕事をしているので、普段から在宅で作業をしているのですが、自粛生活中はやはり、自由に外出できないストレスを感じることがありました。気晴らしになったのはオンラインのアートコースやSNSのアートグループです。
オランダ人アーティストが企画した「#VirtualSketch(バーチャルスケッチ)」というグループでは、世界各国から日替わりでお題となる街が選ばれ、アーティストはその街をグーグルマップで散策し、好きな風景をスケッチして作品を投稿します。実際には顔を合わせることのないアーティスト同士ですが、同じ時間に同じ街をスケッチしているせいか、親近感にも嬉しさにも似たモチベーションを得られました。
アムステルダムやブールタングといったオランダの街を始め、ポーランドやスコットランド、アゼルバイジャン、カナダ、中国など、様々な風景をスケッチして旅行気分も味わえました。
自粛生活の中で得た展示や制作のアイディアを活かしつつ、アートを含めた文化活動が再び活性化することを祈っています。