ついにオーストラリアも、2021年12月にニュー・サウス・ウェールズ州など人口の多い州を皮切りに、各州が規制を付けながら開国、そしてついには2月21日からはワクチン2回接種を終えていることを条件に、全ての国からの入国を受け入れることになりました。
しかし、それでもオーストラリア全土が対象ではないのです。国土の3分の1を占める西オーストラリア州は閉ざされたままなのです。約2年間閉ざされたままの西オーストラリア州では、いったい何が起こっていたのか、起きているのかを在住者目線でお伝えします。
目次
- 各州が強いオーストラリアの政治
- オーストラリアのコロナ対策(開国前)
- 人口密度の低い西オーストラリア州
- 10ヶ月間のゼロコロナ
- 短期間ロックダウン
- 他州との温度差
- 鉄壁でいられる理由
- 州境オープン宣言!
- オーストラリア東海岸の開国(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
- 州境オープン延期
- 現在の西オーストラリア州の様子
- まとめ
各州が強いオーストラリアの政治
今回の開国にあたり、西オーストラリア州だけが対象ではないことに疑問を持つ人がいると思いますが、オーストラリアでは連邦政府(国)と州政府は対等な関係であり、項目によっては各州政府に決定権があります。
つまり、開国に対して各州が連邦政府に同意するなか西オーストラリア州だけが合意せず、州を閉じ続けるという選択をとったということです。
では、なぜ州境を閉じ続けているのかというと、西オーストラリア州はこの2年間コロナの封じ込めに成功しているからです。
オーストラリアのコロナ対策(開国前)
各州多少の違いはあれど、開国前の全州に共通していたのは『海外からの来濠者は全てホテルで14日間の強制隔離』と『入店前のアプリによるID確認』でした。
空港からホテルまでの移動も全て監視下で行われ、これによって海外からのコロナの封じ込めに成功していました。
また、どのお店や施設に入るにもQRコードをスキャン(スマホがない場合は連絡先を記入)して、誰がいつ来たのか記録されました。
これによって、市中感染者が出た場合は感染者の行動を公表して、同タイミングでその場所に居合わせた人はすぐにPCRテストを受け、結果が出るまでは自主隔離。もちろんPCRテストは無料です。
人口密度の低い西オーストラリア州
西オーストラリア州はオーストラリア大陸の西側3分の1を占める国内最大の州です。オーストラリアが日本の約21倍の大きさなので、西オーストラリア州だけでも日本の7倍の大きさがあるということです。
また国の人口が約2,500万人なのに対し、西オーストラリア州は約250万人と10分の1で、そのうちの200万人が首都パースに住んでいます。
つまりとてつもなく人口密度の低い州であり、もともと『密』というものと無縁な土地柄なのです。
10ヶ月間のゼロコロナ
世界中でコロナ感染が確認された2020年3月にはオーストラリア全体でも多くの感染者が報告され、3月20日から国を閉じることになりそれと同時に各州がロックダウン、さらには4月5日からは西オーストラリア州はどの州とも州境を閉じました。州の住人であろうとも入州を認めないというとても厳格なもので、これはオーストラリアの歴史上初のできごとでもありました。
西オーストラリア州全土のロックダウンは1ヶ月間続きましたが、ロックダウンの終わる頃には市中感染者はゼロになったのです。
その後は少しずつ規制を緩めていき学校や公園、カフェやレストラン、映画館、スポーツジムなどが営業を再開し、数ヶ月後には日常生活に不便のない程度に戻りました。事実上はソーシャルディスタンスや施設によって人数制限はありましたが、もともと人口密度の低い土地柄ゆえ、あまり生活に不便がでませんでした。
それからも市中感染ゼロが続き、ゼロコロナが10ヶ月続きました。この10ヶ月間は完全なコロナフリーで、街でマスクをしている人を見ることもなく、家族や友人で集まってパーティーをしたり州内旅行をしたりとコロナ前と同じ生活が送れており、きっと多くの人がコロナの存在を忘れていたと思います。
短期間ロックダウン
コロナ発生初期の2020年3月からゼロコロナを約10ヶ月間継続し、次に市中感染が見つかったのが2021年1月末。海外からの帰国者を隔離するホテルの警備員が1名感染し、症状が出てテストするまでの数日間街を徘徊していたことが発覚しました。
久しぶりの市中感染者に緊張が走り、パースは急遽5日間のロックダウンに。この警備員の行動範囲が公表され、この5日間で1日1万人近くの人がテストを実施しましたが新規感染者は確認されずロックダウンは5日で解除され、また平和が戻りました。
このあと4月と6月にも市中感染が見つかり短期間のロックダウンがありましたが、全て経路が明確で感染拡大には至りませんでした。
普段から全くマスクをしないでこの短期間ロックダウンに効果があるのかと議論されることがありますが、結果から見て感染拡大に至っていないことから、一定の効果はあるものと思われます。
他州との温度差
こんな感じで西オーストラリア州に関しては少しのロックダウンはあっても、基本的にはコロナもマスクさえも関係ないような生活を約2年間送ってきています。私のようにパースから離れて暮らしていると、最初の1ヶ月のロックダウン以降はほぼ関係のない生活です。つまり、州民の不満もそこまでありませんでした。
それに比べ、各州ではロックダウンをしてコロナを封じ込めようにも人口密度の違いもあり、メルボルンでは世界最長の267日間のロックダウンがあったり、シドニーではオミクロン株によって1日数万人を超える新規感染者が出たりしていました。
経済や人々の不満を解消するためにも仕方なく他州が続々と州境を開けるなか、それでも西オーストラリア州だけは頑なに拒み続けていました。一時は感染者数の少ない州に対して州境を開けたこともありましたが、その州に少しでもクラスターが発生したら翌日には容赦なく閉めるというスタイルを貫き通し、いつしか西オーストラリア州の州境は『鉄壁』とまで言われるようになりました。
鉄壁でいられる理由
こうも長期で州境を閉められる理由の一つとして、西オーストラリア州の経済が潤っていることが挙げられます。
西オーストラリア州には金や鉄鋼などの天然鉱物が多く、経済的に大したダメージがありませんでした。むしろコロナ禍では州内消費が上がって景気が良くなったとまで言われています。
また国土の3分の1を占めるので、州内旅行だけでも日本の7倍の動き回れるのです。これまで以上に州内の観光地に注目が集まり、これも観光業に良い経済効果を与えました。
州境オープン宣言!
2021年8月には国がコロナとの共存を受け入れるようになり、ついには年内に国境を開ける計画まで出てきましたが、やはり西オーストラリア州だけは同意しませんでした。
これにはゼロコロナを続けたいというだけでなく、コロナと無縁の生活を続けていたせいでワクチンの接種率が他州に比べて極めて低いことが原因でもありました。
そこで、16歳以上のワクチンの2回接種者が人口の90%を達したら州境を開けることを発表し、このペースで行くと2022年2月5日に州境を開けることができるとまで明確な宣言が出たのです!
この発表には誰もが驚き、そして半信半疑だったと思います。なにせ、これまでも少しでも感染者が出たらロックダウンや州境を閉めたりしてきたので、今回も少しのことが原因で変わるのではないかと・・・。
この宣言は他州に住む家族や友人に長らく会えていない人にとっては朗報でしたが、ゼロコロナでずっと暮していたい人には喜ばしくないものでした。これまでマスクさえもしなくていい生活だったのに、州境を開けることによって感染者が増えることは明らかで、日常生活でもマスク着用を強いられるからです。
オーストラリア東海岸の開国(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
2021年12月には東側の大都市を皮切りに開国していきましたが、そのタイミングでオミクロン株が流行し、シドニーでは1日最大9万人の新規感染者が出てしまいました。
しかしコロナとの共存を選んだ東海岸はそれでも規制を緩める一方で、それに対し西オーストラリア州は容赦なく州境を閉め、市中感染が1人でも確認されれば規制を強めていきました。
この西と東のあまりにも正反対な状況が続くなか州境が開く日が近づいてきましたが、これには多くの議論が巻き起こりました。西オーストラリア州のあまりにも頑なな態度に、オーストラリアから独立するのではないかと言われているほどです。
州境オープン延期
そしてついに、1月20日に2月5日の州境オープンを無期限で延期するとの発表がありました。
これまでの西オーストラリア州の対応を見てきていれば、やはりそうかという感じでしたが、これに希望を持っていた人にはとても残念なものになってしまいました。
西オーストラリア州は開国という選択は一度もしていませんが、州境さえ開けば他州から海外へ行くことができます。
私もそうですが、自国を離れて暮らす多くの人が家族に会えていない期間が続いているのです。
現在の西オーストラリア州の様子(2022年2月13日時点)
今年1月中旬に2020年3月のパンデミック以降初の感染経路不明の市中感染が確認され、これがオミクロン株だということが判明し、それ以降は公共の室内ではマスク着用が義務化されています。最初はパースエリアだけが義務でしが、次第に広まって現在では私の住む人口の少ないエリアでも義務化されています。
現在(2月中旬)では1日の市中感染者は20~30人程度です。
多くの職業でワクチン接種が義務化されており、ワクチン2回接種済みでないとカフェやレストラン、映画館などのほとんどの商業施設に入ることができません。これは全てアプリで管理されています。
州境に関しては少し規制が緩まりこれまでの『14日間の自主隔離』から『7日間の自主隔離』に短縮されました(ワクチン未接種者はホテルで14日間の隔離)。ただし、G2Gと呼ばれる入州許可を取得していることが前提です。また、海外からの到着受け入れが1日530人とこれまでの倍増になりました。
入州のルールはすぐに変更されることがありますので、自身で必ず最新の情報を調べてください。
>>西オーストラリア州政府「COVID-19コロナウイルに関する情報とアドバイス(英語)」はこちら
まとめ
このような感じで少しずつ規制は緩まりつつありますが、いつ急に州境を完全に閉めると言い出すか分からないのが鉄壁の西オーストラリア州です。
2月21日の開国には応じることはありませんが、こうやって西オーストラリア州の神秘さがさらに増していくのだろうなぁ・・・と気長に待ちながら、今後も西オーストラリアの魅力を発信していこうと思います。