※こちらの記事は2018年3月25日に公開したものです。
高知市街からほど近く、こんもりと緑に覆われた五台山に建つ高知県立牧野植物園。ここは、建築好き、植物好きから一目置かれる植物園です。建築と植物が融合したアートフルな世界を、ちょっと覗いてみましょう。
「生きた標本」とも称される、多彩な植物と出会える植物園
高知県立牧野植物園は、高知県生まれの世界的植物学者・牧野富太郎博士を顕彰して作られた総合植物園です。約6haの広大な園内では、まるで自生するかのように約3000種類の多様な植物が植栽され、「生きた標本」と称されるほど。春は桜やツツジ、夏にはヤマアジサイやユリなど四季折々の草花が園内を彩ります。
開放的な半屋外空間を取り入れた本館
高知の自然を再現した緑のアプローチを抜けたら園内へ。まず目を見張るのが、伸びやかなシェル型の大屋根、県産の杉や檜で一面を覆った吹き抜けの建物。その先に広がる植物と建築が融合する独特の景観は、まるでひとつの作品のようです。
ここは映像ホールや図書室などを併設する「本館」と呼ばれる施設で、建築家・内藤廣氏が手がけた建物です。五台山の景観に溶け込むように、植物との調和を目指してデザインされており、開放的な半屋外空間を取り入れた斬新な構造に圧倒されます。
牧野博士の世界を知る展示館
長い回廊で本館と結ばれた展示館では、植物に情熱を注いだ牧野博士について知ることができます。牧野博士直筆の植物図や原稿、当時の写真などが展示され、奥深い植物の世界を身近に感じられる工夫と仕掛けがいっぱい。
展示館の前には、牧野博士が発見・命名したものなどゆかりの植物約250種類を植栽した中庭が広がり、展示館近くでは博士が愛したバイカオウレン(開花は12~2月頃)も見られます。美術家・田窪恭治氏が手がけた水盤もあり、水面に映り込む植物が風や光で表情を変える様子が幻想的です。
圧倒的なスケールを誇る温室
牧野植物園に来たら、温室もぜひ見学を。ガラス張りの温室は高さ約17mもあり、熱帯乾燥地帯ゾーンや滝が流れるジャングルゾーンなど7つのエリアで構成されます。シダ植物やアコウ、バナナやパパイヤなど、多彩な熱帯植物が生い茂っています。
なかでも印象的なのが、大木の洞窟をイメージした高さ9mの「みどりの塔」。吹き抜けの天井から差し込む光と植物の造形の融合した景観は、幻想的でアーティスティックです。
園内にはレストランやカフェもあり、ゆっくりと滞在して散策するのもおすすめです。春になると、牧野博士が愛したヤマザクラや鮮やかな朱色のオンツツジなど様々な草花が満開になり、園内をやさしい春色に染めていきます。
自然と名建築が織り成すアートフルな高知県立牧野植物園で、感性を磨く特別な時間を過ごしてみませんか。